アマゾンに一月以上前に注文していた
Glazes Cone 6 (Ceramic Handbooks)という本、発送がさらに一ヶ月以上伸びるというふざけたメールがきたのでキャンセルしちゃいました。
この洋書、1240度にあわせた、酸化焼成中心の釉薬の調合が紹介されているということで、今の窯にぴったりだったんで欲しかったんですけどね~。
代わりに
完全版 釉薬基礎ノート―基本がわかる、釉薬の見本帖を買いました。この本、改定前のものと、別の応用ノートを統合したような内容で、この二冊は何度も図書館で借りていたから内容自体はほとんど目新しいものはありませんでした。それでも買ったのはゼーゲル式が計算できるおまけソフトがついてたから。
ゼーゲル式とは...簡単に言うと釉薬に含まれるアルカリ性(カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなど)、中性(アルミニウム)、酸性(珪素)の物質の割合から釉薬の溶け方や性質を割り出すもの。
これまでまともに計算したことはなかったんですが、一応はこれを念頭においてたぶんこれくらいの割合だからこう調整すればいいだろう、なんてやってました。ところが実際計算してみると、結構イメージと違っていたものもたくさん。
表はアルカリ性のものを1とし、縦軸が中性、横軸が酸性の成分の比率です。ちなみにこのグラフは野田耕一さんの「混ぜておぼえるはじめての釉薬づくり」の表をベースに自作したもので、オマケにははいってません、念のため。
ちょっと追記。この場合の比率は単なる重さの比率ではなくてモル数の比率。モル数は物質量の単位で、各元素のグラム数が原子量に等しいときを1モルと定義したものです。たとえば炭素Cは原子量が12なので、1モルのときの重さは12g。調合にマグネシウムMgOが2g含まれているとすると、MgOの分子量は40.31なので重量2gを分子量40.31で割った0.05がモル数になります。これを釉薬に含まれるすべての分子に当てはめて...ZZZZZzzzzzz。
なんて難しいことは全部計算ソフトに任せましょう。(笑)
黒はこれまで作って安定している釉薬、青は今調整中のもの。
こうしてみると同じように溶けきらないように見えた
唐津透明釉と灰失透釉、実は溶けない原因が全く違ったことがわかります。
唐津透明釉、一度調整しなおした位置がここです。調整前と調整後の調合は
福島長石 34 → 50
福島珪石 42
石灰石 3 → 10
カオリン 5 → 10
調整の方向性としては珪石分を減らす方向なので間違ってはないんですが、長石は三つの成分すべてが含まれている原料なので、実際には石灰石を多く加えてアルカリを増やした方が透明に近づくようです。
一方の灰失透釉はうまくいっていた古い調合よりアルカリ性分が多すぎるようです。この灰失透釉も一度調整しているんですが...
福島珪石 30
カオリン 25
石灰石 35 → 45
というようにさらにアルカリを加える間違った調整をしてたようです。古い調合に合わせるには中性・酸性を増やすために珪石とカオリンを足した方が良いみたいです。
もちろんゼーゲル式にもいろいろ不十分な所もあるようですが、どっちの方向に調整したらいいかが予想できるだけでもかなり役に立ちそうです。
一から計算するんじゃ大変なんですが、こうして計算してくれるものがあると便利ですね~。
とはいえさすがはオマケ、登録されている原料のデータが少なすぎて、手動で入力しなきゃいけないのが難点です。
やっぱりちゃんとしたソフトじゃないとだめなんですかね。国内でもいくつか売られているようですが、一番気になっているのは
Matrixというニュージーランドで作られているソフト。釉薬の溶け方だけでなく、調合した釉薬の膨張率とか色合いなんかも表示してくれるらしいです。日本語版...はさすがに出ないでしょうね~。