先日チラッと紹介した"
Glazes Cone 6: 1240 Degrees C/2264 Degrees F"という洋書の釉薬本、リクエストを頂いたのでちょっと詳しく取り上げてみます。
タイトルのとおり、1240度での焼成、しかも酸化だけに的を絞ってるんですが、これは特に欧米の電気窯の多くはバーナーを使った還元に対応していないこと、窯の寿命を延ばすために温度を上げすぎず1240度前後で焼成しているケースが多いことを考えると確かにニーズは多いですね。
一方国内の釉薬本は1280度前後を想定したものがほとんど。以前にもゼーゲル式をもとにしたアルミナ・シリカの相関図に自作の釉薬を当てはめたものを紹介しましたが...
これはやはり1280度前後を想定したもの。イマイチしっくり来ないところもありました。
これを今回の書籍に紹介されていた相関図に当てはめてみると...
明らかにこっちの方がしっくりきます。黄色の楕円の濃い部分が無貫入できれいな透明釉の領域だそうです。砧青磁のみが枠の外の方にあるのに溶けているのはおそらくバリウムが入ってるからと思われます。
この相関図でもわかるように、1280度に比べると透明釉の領域が狭いことがわかります。そのため長石や石灰、珪石といった基本的な原料だけで透明釉をつくることをさっさとあきらめて、リチウムや亜鉛を加えて溶けやすくしてます。
一番参考になったのは釉薬を溶かすためのアルカリ分の扱い。国内の書籍だとカリウム、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ類と、カルシウム、バリウム、マグネシウムなどのアルカリ土類をあまり区別なく取り上げている一方、こちらは両者のバランスを重要視しています。
アルカリ類は溶かす力が強い一方で膨張係数が高くて貫入が出やすく、アルカリ土類は弱いけど貫入は出にくい、ということで、うまく溶かしてしかも貫入の少ない釉薬をつくるにはそのバランスが大事、というわけです。
さらになるほど~、と思ったのはアルカリ分が偏った場合の釉薬。実際調合してみると...
ビードロ釉のように透明だけど流れやすいものもあれば...
結晶化してガサガサになるのもあってなんでだろ~、と思ってました。
この本によれば、アルカリ類が多いと透明だけど流れやすく、アルカリ土類が多いと結晶化してマット状になりやすくなるんだそうです、なるほどね~。
ほかにもそれぞれの分子の膨張係数をもとに貫入のでやすさを計算する方法があったりといろいろ参考になりました。あとは実際に試して見てどうなるかですね。
さて今日は本焼きの窯出しでしたが、今までで一番満足度が低かったかも。まあ収穫もあったので良しとします。